「阪田寛夫詩集」(阪田寛夫)

童心に返ることが出来る詩集

「阪田寛夫詩集」
(阪田寛夫)ハルキ文庫

詩集という分野は、
文庫本の中でもマイナーな存在です。
中学生の子どもが、
書店の書棚から詩集を持って
レジへ向かう。あり得ない光景です。
詩集こそ大人が「これ読んでみて」と
積極的に薦めるべき分野だと
感じています。

当ブログでは、これまで
新川和江金子みすゞ工藤直子
三人の女性詩人の詩集を紹介しました。
男性詩人であればこの人、
阪田寛夫です。

「サッちゃん」「おなかのへるうた」
「ねこふんじゃった」は
誰しも子どもの頃に
歌った記憶があるはずです。
しかし「作詞したのは誰?」と
尋ねられたとき、すぐに「阪田寛夫」と
答えられる人が何人いるでしょうか。
私でさえこの詩集を買うまでは
うろ覚えでした。
正直に言うと阪田寛夫と
まど・みちおの区別が
ついていませんでした
(まど・みちおは「ぞうさん」
「やぎさんゆうびん」など)。

「所詮子ども向けだろう」と侮るなかれ、
読んでみるとやはり素晴らしいです。
女性詩人のお三方は
「癒やされる」詩集ですが、こちらは
「童心に返ることが出来る」詩集とでも
いいましょうか。
現実社会に疲れたときに、
ぱらぱらとめくるだけでも
持つ価値ありだと考えます。

 ようちえんでまちがえた
 せんせいのこと
 おかあさん、てよんじゃった
 ぼくは あかくなって
 せんせいは もっと
 あかくなって

 (「すき すき すき」)
いいですよね、こんな詩。
心が温まります。

 びりのきもちが わかるかな
 みんなのせなかや 足のうら
 じぶんの鼻が みえだすと
 びりのつらさが ビリビリビリ
 だからきらいだ うんどうかい
 まけるのいやだよ くやしいよ
 おもたい足を 追いぬいて
 びりのきもちが ビリビリビリ

 (「びりの きもち」)
弱者に寄り添うような
優しさを感じます。

さて、他にどんな本を
著しているのだろうと思い、
調べてみました。
なんと芥川賞作家(昭和五十年に
「土の器」で受賞している)でした。
近いうちに読みたいと思います。

さらに調べると、
なんと私の好きなミュージカル、
劇団四季の「桃次郎の冒険」の
原作者でした。
NHKで放送したものを
ブルーレイで録画して
何度も見ていたのに
気が付きませんでした!
単なる「昔の子どもの歌の歌詞を
作詞した人」ではなかったのです。

中学校1年生のみなさん、
一生涯つきあえる詩集はいかがですか。

(2018.9.30)

RRiceさんによる写真ACからの写真

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